参加型評価の具体的な進め方 〜参加型評価のすすめ2

前回は、参加型評価が登場してきた背景やその特徴を紹介しました。今回は、実際に参加型評価の具体的な進め方について、簡単に説明します。

たとえば、あるNPOが、プロジェクトを評価する場合を考えます。従来型評価の場合は、おもに外部の専門家が評価を行ないますが、参加型評価では、プロジェクトに関わっている当事者、NPOのスタッフや受益者が、評価チームを作ります。そして彼らが自分たちの「オーダーメイド」の評価をするわけです。

参加型評価は基本的に、①評価設計(=計画)、②データ収集・分析、③結果のまとめと報告、の流れを、評価チームで話し合いながら進めます。

1番目の評価設計では、評価の目的(イ学習と改善、ロ説明責任など)や、評価設問(評価を通じて何を知りたいか)、データ収集方法(どうやって情報を集めるか)などを決めていきます。

例えば街づくりをしているNPOが、プロジェクトの評価をするとします。そして評価目的を「事業を改善する」と決めたとします。次に評価を通じて知りたいこと、「街づくりプロジェクトは計画通りに進んでいるか」などが評価設問になり、それを明らかにするために、住民に「アンケート調査を実施する」ことがデータ収集の選択となる、といった具合です。

2番目のデータ収集と分析は、評価設計に従い、データを集め、その結果を解釈することです。評価設問は通常複数あるので、アンケートやインタビューなどをチームで実施して、さまざまな情報が集めます。分析は、集まった情報を皆で共有・解釈して「うまくいったのか、いかなかったのか」「うまくいった理由は何か」「いかなかった原因は何か」などをデータに基づいて考えていきます。この作業を通じて、評価目的である「改善」を実現するために何をすれば良いのか、具体的な方策を話し合うのです。

このようにプロジェクトの当事者が、自ら事業を振り返り、その成果や課題を明らかにし、またその背景を分析することで、プロジェクト理解・当事者意識の向上や、関係者の相互理解が進むことが期待され、結果としてプロジェクトの改善につながっていくのです。

3番目の「結果のまとめと報告」は、評価の結果、例えば「プロジェクトは概ね順調に成果をあげているが、○□×の課題があり、△○□の方向への修正が望まれる」といったような内容をわかりやすく文章にまとめ、関係者に報告することです。

通常、プロジェクトのお金を出している資金提供者への報告が優先される傾向がありますが、それ以外の関係者、特に受益者にも評価結果を忘れずに報告することが、事業の改善のためには有効といわれます。

以上、参加型評価の進め方の基本を書いてみました。またこのようなステップをより実戦的に行なえるように、さまざまな手法が開発されています。多くの欧米のNGOが用いているMSC(モスト・シグニフィカント・チェンジ)手法などは、データを「重大な変化の物語」という定性的な形でたくさん集め、その中から「もっとも重大な変化の物語」を評価チームで選ぶことを通じて、変化の詳細や背景を分析し、事業の改善に生かしていく手法です。

私はこのMSC手法が、日本の NPOなど非営利活動やソーシャルビジネス等公益性の高い事業活動の改善にも効果的だと考え、日本でMSCを広めていく活動を展開しています。(つづく)

執筆者プロフィール

田中 博
田中 博
1963年生まれ。ネパールの農村開発等の活動をするNGO事務局長を経て、イギリスのサセックス大学国際開発研究所の大学院で参加型評価を学ぶ。現在、一般社団法人参加型評価センター代表理事。